サテライトオフィスで起こりうる「災害時の事業継続計画(BCP)」と情報バックアップ戦略

経営者様、IT・セキュリティ担当者様。地方へのサテライトオフィス開設は、都心に集中した事業拠点のリスク分散を図るBCP(事業継続計画)の一環として非常に有効です。しかし、サテライトオフィス自体が地方特有の災害(地震、水害、台風など)に直面するリスクも存在します。 この記事では、サテライトオフィスで起こりうる災害リスクへの具体的な対策として、事業継続計画(BCP)の策定ポイントと、情報バックアップおよびデータ復旧に関する戦略的なITツール活用術を解説します。高額な設備投資を避け、費用対効果の高いリスクマネジメントを実現するための指針を提供します。

サテライトオフィスが果たすBCP上の役割と新たなリスク

サテライトオフィスは、本社機能が停止した場合の「代替拠点」となる重要な役割を担います。

BCP上のメリット:機能分散

本社が大規模災害(例:首都直下型地震)に見舞われても、地方のサテライトオフィスが業務を継続することで、事業の全停止を防ぐことができます。これは企業としての信頼性を維持する上で不可欠です。

新たなリスク:地方特有の災害

サテライトオフィスが存在する地方特有の災害(例:豪雪による交通遮断、水害による浸水)により、代替拠点自体が機能停止するリスクがあります。このため、地理的に離れた複数の拠点(本社、サテライトA、サテライトBなど)を持つことが理想的です。


情報バックアップ戦略:クラウドツールの徹底活用

災害時、物理的なオフィスよりも重要なのは、「データとシステム」の継続性です。高額な設備投資となる自社サーバーの分散設置を避け、クラウドサービスをフル活用します。

戦略1:クラウドストレージ・SaaSによるデータ分散

ローカルPCやサテライトオフィスのサーバーにデータを置くのをやめ、すべての業務データをクラウドストレージ(Google Drive、OneDriveなど)やクラウド勤怠管理SaaSに集約します。

  • 費用対効果: 初期費用が低コストで済み、データはサービス提供者側の堅牢なデータセンターに分散保管されるため、セキュリティと可用性が同時に確保されます。
  • 災害対応: 物理的なオフィスが全壊しても、インターネット環境さえあれば、全従業員が別の場所(自宅、コワーキングスペースなど)から業務を再開できます。

戦略2:業務連絡手段の確保

電話回線やメールが不通になった場合に備え、Web会議ツールやビジネスチャットを、プライマリの連絡手段とは別に準備しておくことがBCP上重要です。

「ビジネスチャットは、通信障害時でも低帯域で連絡が取りやすいという特性があります。安価な月額費用でBCPの核となります。」

サテライトオフィス向けBCP策定チェックリスト

サテライトオフィス開設時に策定すべきBCPの重要項目です。

I. 物理的リスク対策

  • ✅ 電源確保: 停電に備え、無停電電源装置(UPS)を設置するか、高性能ノートPC(バッテリー駆動時間優先)の利用を義務付ける。
  • ✅ 物理的セキュリティ: 災害時、従業員が不在になることを想定し、入退室管理と重要書類の施錠を徹底する。

II. 情報・システム継続対策

  • ✅ 業務データ: すべてクラウドに保存されているか。ローカルに保存する場合は、毎日自動でクラウドに同期されているか。
  • ✅ 緊急時連絡体制: 災害発生時、誰が、どのツールで、誰に連絡するかをフローチャートで明文化し、全従業員に共有する。

III. 人的・労務リスク対策

✅ 安否確認システム: 災害時、地方在住の従業員の安否を迅速に確認できる安否確認SaaSを導入する。

まとめ:BCPは「クラウドと分散」が基本

サテライトオフィスでのBCP策定の核は、「物理的な拠点のリスクを、デジタルなクラウドで吸収する」という戦略です。

高額な設備投資ではなく、クラウドストレージやビジネスチャットといった低コストなSaaSの徹底活用によって、費用対効果の高い事業継続体制を構築し、企業としての信頼性を揺るぎないものにしてください。