中小企業のリモートワークにおける「みなし労働時間制」の導入メリットと注意点

中小企業の経営者様、人事担当者様。リモートワーク(在宅勤務)の導入が進む中で、従業員の労働時間を厳密に管理することが難しくなっていませんか?特に、営業職や企画職など、社外での業務が多い職種では、実労働時間の把握が困難になりがちです。 この課題を解決する手段の一つが「みなし労働時間制」です。この記事では、中小企業がみなし労働時間制(特に事業場外みなし労働時間制)をリモートワークに導入する際の具体的なメリット、そして労働基準法上の注意点を詳細に解説します。労務コンサルティング費用を抑えつつ、法改正対応を確実に行うための知識を提供します。

中小企業がリモートワークで「みなし労働時間制」を導入するメリット

事業場外みなし労働時間制は、労働時間の算定が難しい場合に、あらかじめ定めた時間(所定労働時間など)を労働したものとみなす制度です。リモートワークでこれを活用する最大のメリットは、管理の複雑性を大幅に解消できる点にあります。

  • メリット1:労働時間管理の簡素化: クラウド勤怠管理システムによる厳密な打刻管理が不要になり、中小企業の人事担当者の負担が軽減します。
  • メリット2:生産性の向上: 従業員は打刻や時間単位の制約から解放され、自身の裁量で業務を進めやすくなり、結果として生産性の向上に繋がる可能性があります。
  • メリット3:残業代計算の明確化: みなし時間を超えて労働が必要な場合(法定労働時間を超える場合)、事前に協定を締結していれば、計算が明確になります。

ただし、この制度はすべての職種や業務に適用できるわけではありません。適用要件を満たし、労働基準法を遵守することが前提です。

導入前の最重要チェック:みなし労働時間制の適用要件と「みなし時間」の設定

リモートワークにみなし労働時間制を適用するには、労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難であることが必須要件です。

適用が「困難」と判断されるケース・されないケース

中小企業のリモートワークでみなし労働時間制が適用できないと判断されるケースが増えています。

  • ❌ 適用できない例: 終日PCでクラウド勤怠管理システムに接続し、チャットツールなどで常に業務指示を受けている場合。また、訪問先や行動をGPSで常時把握している場合。
  • ⭕ 適用できる可能性が高い例: 営業職が顧客を終日訪問し、会社からの具体的な指示がなく、業務連絡も限定的である場合。

「制度を導入したものの、結局PCログを管理していたため、労働基準監督署から『実態はみなしではない』と指摘され、残業代の追加支払いが必要になった。」

「みなし時間」が法定労働時間を超える場合の処理

リモートワークで通常通り8時間ではなく、業務遂行に9時間かかると見込まれる場合、労使協定の締結が必要です。この場合、みなし時間が法定労働時間(8時間)を超えるため、1時間分の割増賃金(残業代)の支払い義務が生じます。この残業代計算は労務コンサルティングの専門知識が必要です。

導入時に中小企業が絶対遵守すべき労働基準法上の注意点

制度の合法的な運用には、以下の注意点を厳守し、就業規則の変更と労使協定の締結が不可欠です。

注意点1:労使協定の締結と届出

事業場外みなし労働時間制を導入する場合、労働者代表との労使協定を締結し、労働基準監督署への届出が義務付けられています。協定には「対象業務」「みなし時間」「休憩時間」などを明記しなければなりません。

注意点2:深夜・休日労働への対応

みなし労働時間制であっても、深夜(22時~翌5時)や法定休日に労働した場合は、別途割増賃金の支払いが必要です。中小企業であっても、この残業代計算のルールは適用されます。

注意点3:健康管理への配慮(安全配慮義務)

経営者は、みなし労働時間制を適用する従業員に対しても安全配慮義務を負います。長時間労働による健康被害が発生しないよう、自己申告や面談を通じて、実態としての労働時間を把握する努力が求められます。

まとめ:みなし労働時間制は「適用要件の判断」が鍵

中小企業のリモートワークにおいてみなし労働時間制は、管理の負担を軽減する大きなメリットがありますが、「使用者の具体的な指揮監督が及ばない」という労働基準法上の適用要件の判断が非常にデリケートです。

安易な導入は、後々の未払い残業代請求リスクを高めます。導入を検討する際は、自社の業務実態が要件を満たしているかを慎重にチェックし、必要であれば労務コンサルティングの専門家(高単価商材)に相談することを強く推奨します。